悪性胸膜中皮腫
  • 胸腔内にある肺、縦隔及び胸壁の内側は胸膜で覆われています。この表面にあるのが中皮細胞です。中皮からでる腫瘍は悪性、良性いずれもできますが、悪性のものは限局しているもの(限局性)から広範囲に拡がっているもの(びまん性)まであります。腹腔内にも腹膜におおわれており、腹膜中皮腫が発生しますが、この項では主に悪性胸膜中皮腫について要約します。悪性胸膜中皮腫の原因としてアスベスト(石綿)の吸入が考えられています。すべての石綿が原因になりうると考えられていますが、特にアモサイト(茶石綿)とクロシドライト(青石綿)ではリスクが高いと言われています。吸入後、平均して40年程度すると発症すると言われており、1970年代にアスベストの輸入量が多かった事を考慮すると、今後も発症者が増加すると予想されています。労働中にアスベストを吸入しただけではなく、その家族や、アスベストを扱う事業所周囲の住民にも発症者が報告されています。
  • 悪性の胸膜中皮腫は発生早期には症状があまりなく、早期の診断が難しい疾患です。その後、進行すると胸痛が生じたり、胸水が貯留したり胸膜が広い範囲に厚くなるため呼吸困難をきたしたりします。
  • 胸部X線や胸部CTで胸膜の肥厚や胸水が認められれば、胸水や胸膜の細胞や胸膜の組織を、経皮的に針を用いて採取します。悪性胸膜中皮腫に優位に認められるのは縦隔側胸膜や葉間胸膜への浸潤、1cm以上の胸膜肥厚、肺全体を絞厄するような進展、結節上の胸膜肥厚であると言われています。また胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)や肺線維化などの所見の診断にもCTは有効です。しかし、悪性胸膜中皮腫の場合でも一度の病理検査では悪性の細胞が常に採取されるとは限らず、状態に応じて胸腔鏡検査(肋骨と肋骨の間を切開し、胸腔鏡を挿入し胸腔内を観察し組織を採取します)が必要になる場合もあります。得られた組織を病理医が観察し悪性の細胞や組織を認めた場合は、その細胞が悪性胸膜中皮腫由来のものか、それとも他の悪性腫瘍(肺がんや他の臓器から転移性のもの)によるものかの鑑別が必要になりますが、標本の免疫組織化学染色などを用いて慎重に診断を行います。病理診断が確定したら、病巣の拡がりを調べるために、胸部・腹部・頭部のCTやMRI、骨シンチ、などを行います。
  • 病期
     I期 :片側の胸膜内に限局している
     II期:胸腔内のリンパ節転移を伴っている
     III期:胸壁・縦隔・反対側の胸膜・まで拡がっている、横隔膜を貫いているもの
     IV期:血行性の転移を伴っている
    I期の一部(限局型胸膜中皮腫)は外科療法が行われる場合がありますが、II期以上に進行していて手術で取りきることができない病状の場合は、患者さんの全身状態や希望に応じて、症状を緩和する目的で緩和ケアを中心に行うか、対症的な放射線照射や、全身化学療法を行います。現在、悪性胸膜中皮腫にたいしてはシスプラチンとペメトレキセドの併用療法が有効であると報告されていますので、全身状態に応じて化学療法を行っております。
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