循環器科(心臓センター)
主な治療
カテーテル手術
冠動脈の狭窄や閉塞に対して、ガイドワイヤーといわれる細くて柔らかいワイヤーを通して、そのガイドワイヤーに沿わせる形でバルーンカテーテルを病変部にもっていき、外から圧をかけてそのバルーンを膨らませることによって、動脈硬化を押しつぶして血管を拡げる治療です。 |
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ロータブレーター 糖尿病や透析の患者さんでは、動脈硬化が進行して血管壁にカルシウムが沈着して硬くなります。石のように硬い動脈硬化は、バルーンカテーテルで拡張できなかったり、バルーンカテーテル自体が病変まですすめられなかったりします。拡張できない血管にはステントも留置できないため、まずはロータブレーターで、石灰化した動脈硬化を削ってから、バルーンカテーテルで拡張させ、必要があればステントを留置します。 |
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エキシマレーザー ①分子結合の溶解(光科学的効果)、②光熱エネルギーの産出(光熱的効果)、③力学的エネルギーの創出(光力学的効果)の過程で動脈硬化を蒸散します。 |
<診断補助検査> 血管造影法は、内腔を流れる造影剤のシルエットを撮像しています。これに対してIVUSは超音波を冠動脈の中に挿入することにより動脈硬化や血管の大きさが観察できるので、実際の動脈硬化の正常や動脈硬化の量や分布、留置したステントの血管に対する密着の有無などを把握することによりカテーテル治療や診断の補助的な役割をになっています。 |
OCT(光干渉断層撮影) IVUSと同様に血管内イメージングモダリティーで、15μmという非常に高い解像度を有し、さらに迅速かつ精密な血管画像情報を得ることができます。動脈硬化の質的な情報が得られたり、治療の際の補助的なデバイスとして造影からでは得られない血管内の詳細な情報を得ることができます。表面の正常は詳細に観察できますが、血管の壁までは観察することができません。 |
FFR(心筋血流予備比)CFR(冠血流予備能)IMR(微小循環抵抗指数) |
冠動脈の狭窄部より奥の圧は、プレッシャーワイヤと呼ばれる圧センサーが付いた細くて柔らかいワイヤを冠動脈の中に入れて圧を測定します。冠動脈入り口の圧は、冠動脈の入り口まで挿入しているカテーテルと呼ばれる細い管で測定します。FFRが高ければ高いほど虚血状態が軽いということです。 |
FFRの結果に基づいた治療の決定 FFRの結果に基づいて治療を行う事を決定する方法が適切か、アメリカやヨーロッパの20施設で1、000人を超える患者様において検討されています。 冠動脈にいくつか狭窄を有する患者様を血管造影のみで全ての狭窄にカテーテル治療を行う患者様(496例)と血管造影に加えてFFR測定を行い、治療を行うべき狭窄を見極めてカテーテル治療を行う患者様(509例)に分けて治療後の経過を比較しました。FFR測定の結果、FFRが正常であった513の狭窄部位は治療の必要が無いと判断し、治療を行いませんでした。 その結果、FFR測定の結果に基づいて治療を行った患者様は、血管造影のみでカテーテル治療を行った患者様と比較して、治療後1年までの合併症(死亡、心筋梗塞、再治療)の発生を30%減らす事が出来ました。 * J am Coll Cardiol 2010;56:177–84より また別の医学会での検討では、FFRが正常で虚血を認めない狭窄部位にカテーテル治療を行っても行わなくても結果は変わらないと報告されています。* * J Am Coll Cardiol 2007;49:2105-11より |
冠動脈以外の動脈硬化性病変に対して、PCIの技術を応用して同様な治療を行っています。 |
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平均寿命がのびたこともあり、高齢者の大動脈弁狭窄症が増加しています。大動脈弁狭窄症とは心臓(左心室)と大動脈の間にある弁(心臓の4つの弁のうちの一つ)が、硬化したり癒着したりして可動性が悪くなり心臓が収縮して血液を送り出す時に心臓に負担がかかる病気です。治療は原則的に弁置換の手術が必要になりますが、高齢になって問題になることが多くなり、侵襲の大きな心臓の手術に耐えられないケースが増えてきました。最近、このような手術の不適症例に対して、バルーンカテーテルで大動脈弁を拡げる治療を池上総合病院 坂田芳人先生の御指導ではじめました。手術のように確実な治療効果が得られるわけではありませんが、ご高齢の方や合併症があり手術困難な場合の選択肢の一つと考えています。 |
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赤矢印は、心臓の左心室の圧と大動脈弁を通過した大動脈の圧の較差を示しています。この差が大きいほど大動脈弁狭窄は重傷です。青は時相を反映して圧格差を面積で表現しています。 |
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大動脈弁をバルーンカテーテルで拡張しています。 |
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バルーンで大動脈を拡張後は大動脈弁がよく動くようになり、左心室と大動脈の圧格差が少なくなります。 |
肺高血圧症の原因のひとつに慢性血栓塞栓性肺高血圧症という病気があります。肺動脈に器質化した血栓が付着し、血流を阻害し血管抵抗を上昇させ低酸素血症をひきおこします。 疾患自体の頻度は日本で1590名(2011年)と頻度が少ないが、自覚症状として息切れや呼吸苦といった症状が慢性的に持続し、狭心症や心不全と似ており、狭心症や心不全が否定された場合、原因不明の症状として診断まで至っていない症例もあると考えられます。中枢側にできた血栓に関しては手術で取り除くことができますが、末梢型の場合は手術では治療が難しいのが現状です。 治療薬の開発で、息切れや呼吸苦といった症状を有意に改善することができるようになりましたが、肺動脈の圧を低下させることはなかなか困難で、肺動脈圧によって生命予後が左右されるため肺動脈圧を低下させる治療が必要です。岡山医療センターの松原広巳先生らが、バルーンカテーテルで肺動脈の内膜と一体化した器質化血栓を圧着させることにより肺動脈圧が有意に下がると報告し、徐々にこの治療(BPA)が拡がりつつあります。当院でも松原先生に御指導いただき治療をはじめております。 |
植込みデバイス治療
体内に機械を植え込む治療です。機械本体とそれと接続する電極リードから構成されます。胸の上方の皮膚を5-6cm横切開して、胸の筋肉の表(筋肉と脂肪の間)または裏側(筋肉と筋肉の間)に本体を入れます。電極リード(1-3本)は腕から戻る静脈を介して、先端を心臓の内側に留置します。
① ペースメーカー
脈の発生源の働きが弱い『洞機能不全』や途中の電気伝導路が切断してしまう『房室ブロック』 により、極端に脈が遅くなることがあります。その結果、全身に必要な血液が十分行き渡らなくなり、めまい・ふらつきや意識消失、息切れといった症状がおこり、時には生命にかかわる危険な状態におちいることがあります。『ペースメーカー』は、このような徐脈性不整脈(脈が遅くなる)に対する大変有効な治療です。
② ICD(植込み型除細動器)
『心室頻拍』や『心室細動』は致死的不整脈と呼ばれ、発生するとすぐさま心臓突然死の危機に直面します。救命のためには、一刻も早く不整脈を停止させる必要があります。体内に植え込まれたICDは、不整脈の発生そのものを抑制するものではありませんが、常に心臓のリズムを監視し、致死的不整脈が発生した場合は、直ちにプログラムされた停止処置を自動実行します。致死的不整脈の発生後、最短の時間で不整脈を停止させることができ、心臓突然死を予防します。不整脈停止処置だけでなく、通常のペースメーカー機能も兼ね備えています。過去に致死的不整脈で救命歴のある方や低心機能で致死的不整脈を起こす危険性の高い方に適応となる治療です。
③ CRT(両心室同期ペーシング治療)
ペースメーカーを応用した重症心不全に対する治療法です。通常のペースメーカーに接続する心室電極リードは1本だけですが、このCRT治療では2本のリードを心室側に留置します。心房リードを使用する場合、合計3本の電極リードが体内に留置されることになります。右心室側と左心室の外側を走行する静脈内に留置した電極リードから、全身に血液を送り出すメインポンプである左心室を挟み込む形で刺激することで、ポンプ作用をサポートします。ただし、どんな心不全の状態の方にも有効に作用するとは限らないので、その適応は慎重に検討する必要があります。心機能の悪い方は致死的不整脈を併発することも多いので、CRT治療とICD機能の両方を有するCRT-Dと呼ばれるデバイスを使用することもあります。
基本的に局所麻酔で植込み手術をおこないます。デバイスによって術時間は多少変わりますが、概ね2時間程度になります。電極リードの数が多い、CRT治療は通常のペースメーカーやICDより術時間少し長くなります。
図 ペースメーカーの概要(日本ライフライン社ホームページより http://www.jll.co.jp/)
図 両心室同期ペースメーカー(CRT)本体 |
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図 両心室同期機能付き除細動器(CRT-D)本体 |
図 CRT-Dの概要(セント・ジュード・メディカル社ホームページより http://www.sjm.co.jp/)
心臓リハビリテーション
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