神奈川県がん診療連携指定病院
当院は、2012年4月1日よりがん治療における手術、放射線治療、化学療法等の実績が評価され、神奈川県より「神奈川県がん診療連携指定病院」の指定を受けております。
神奈川県がん診療連携指定病院とは、専門的ながん医療の提供、がん診療の連携協力体制の整備、および患者さんへの相談支援や情報提供などの役割を担い、国が指定するがん診療連携拠点病院に準じた診療機能を有する病院として、県民に高度ながん医療を提供するため、神奈川県が認定した病院です。
がんについて
本邦では、がん(悪性新生物)は男女ともに死因のトップであり、男性の死因の約30%、女性の死因の約20%を占めています。また男女別にがんの罹患数(2018年)をみると、男性は前立腺がん、胃がん、大腸がんの順に多く、女性は乳がん、大腸がん、肺がんの順となります。男女別がんの死亡数(2019年)では、男性は肺がん、胃がん、大腸がん、女性は大腸がん、肺がん、膵臓がんの順となります。また一生のうちに一度以上がんに罹患する確率は、2018年データより男性約65%(3人に2人)、女性約50%(2人に1人)といわれています。
2006年に策定された「がん対策基本法」では、①がんに関する研究の推進と成果の普及・活用、②がん医療の均てん化の促進、③がん患者の意向を十分尊重したがん医療提供体制の整備、の3つを推奨しており、これらを踏まえ当院でも病院全体としての整備、がん診療の担当科としての整備をそれぞれ進めています。具体的には、院内がん統計の充実化をはかりそれを病院全体にフィードバックすることにより各部門での成果、反省点を明確化すること、緩和ケアチームによる活動を充実化させがん患者の苦痛緩和に努めること、ピアサポート活動を行うことによりがん患者の意向に沿ったケアを充実させること、アピアランスセンターの開設などに取り組んでおります
さまざまながんの種類
肺がん
肺がんに対する検査・治療は、呼吸器内科・呼吸器外科の医師が、放射線画像診断部門・放射線治療部門・病理検査室と連携を取り合って、がん細胞の種類や進行度に応じて患者さんに最も望ましいものを提案いたします。薬物療法では抗がん剤療法に加え、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬など、病状に応じた治療を選択しております。また肺がん以外にも胸膜中皮腫、縦隔腫瘍も呼吸器内科・呼吸器外科が担当します。
胃がん
以前日本では胃がんが罹患数、死亡数ともに第1位でしたが、ピロリ菌の除菌により減少し、現在罹患数は第2位(2018年)、死亡数は第3位(2019年)と減少しました。近年治療法も進歩してきており、Stageや組織型により、内視鏡治療、化学療法、薬物療法を選択または組み合わせてよりよい治療を検討しております。
大腸がん
日本の男女合わせた統計では、大腸がんが罹患数第1位(2018年)、死亡数第2位(2019年)であり、2018年時点で罹患数、死亡数ともにまだ増加しております。大腸がんは早期で発見できれば5年生存率はほぼ100%とされていますが、早期では自覚症状が無いことが多く、検診がとても有用であると言えます。治療はがんの進行度合いによって内視鏡手術、腹腔鏡下手術、開腹手術を使い分けることとり、また薬物療法の進歩もめざましいと言えます。
肝がん
肝がんの 95%は肝細胞がんであり、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの感染により長期にわたって慢性炎症が加わることが原因とされていますが、近年アルコールやメタボリックシンドロームによる脂肪肝が肝がんを引き起こしている可能性も示唆されております。C型肝炎の治療が進歩したことにより肝がんは年々減少していますが、まだ日本におけるがん死亡数では第5位(2019年)を占めております。治療としては、手術、ラジオ波焼灼療法、カテーテル治療、薬物療法などをその進行度や全身の状態で使い分けております。
乳がん
日本女性の罹患数第1位のがんであり、日本では罹患数、死亡数ともにまだ増加(2018年)しております。とくに日本では40~50代の比較的若年層の罹患が多く、この年代では女性死亡率の第1位となっております。治療は手術療法、放射線療法、薬物療法のいずれも効果的で、これらを組み合わせることで根治率は年々高まっております。
前立腺がん
前立腺は男性にしかない特有の臓器で、尿道を取り囲むようにして膀胱の真下に位置しています。前立腺がんは年々増加しており、日本男性の罹患数第1位(2018年)となっております。前立腺がんの診断には腫瘍マーカーであるPSAがとても有用であり、検診で多用されています。治療は進行度、年齢などにより手術療法、薬物療法、放射線療法を使い分けております。
緩和ケア
「緩和ケア」という言葉を聞いて、「治療を終えてから受けるもの」と思われている方もいるかもしれません。今は国の指針のおかげで「がんと診断された時から緩和ケア」という言葉が浸透し始めています。「あなたはがんです」と言われた時から始まる、不安や心配事に早期に対応することが必要とされています。また、がんが進行した段階で発見され、すでに生活に支障を来す症状を体験している方も多くいます。体のつらさや心のつらさに対応しながら、がんの治療を提供することが当たり前となっています。
当院では、多職種で構成された緩和ケアチームが、病棟の看護師や主治医と連携して、患者さんのつらさを緩和したり、家族の苦悩に寄り添ったりするケアを提供しています。
具体的な対象患者さんは以下です
- がんによる痛みの症状緩和が必要な方
- 痛み意外な身体的な症状が辛い方
- 精神的な不安が強く、今後の治療や入院生活、自宅での生活が心配な方
- 病状進行に伴い、不眠や意識の混乱で入院生活に支障を来している方
入院時に、病棟看護師より「生活のしやすさに関する質問表」という、今の状態をお尋ねする簡単な質問用紙をお配りしています。そちらに遠慮なく、ご自分の心と体の状態やお困りごとを記載してください。病棟看護師と情報を共有させていただき、必要時は緩和ケアチーム担当看護師がベッドサイドへ伺いお話を聞かせていただくことがあります。
質問表の有無にかかわらず、緩和ケアチームと相談をしてみたいという方がおりましたら、主治医・病棟スタッフ・外来スタッフへお声がけください。