胸腔内で左右の肺の間の部分を「縦隔」と呼びます。ここには気管、心臓や大血管、食道、リンパ組織、胸腺、神経などの多様な臓器がおさまっている「場所」です。この場所にできた腫瘍を「縦隔腫瘍」と呼びます。症状がなく検診や他の疾患の治療中に発見された場合や、腫瘍が周囲に拡がり、息苦しい、胸が痛い、などの症状が出現し医療機関を受診され発見される場合もあります。胸部X線、胸部CT、胸部MRIなどの画像診断を行い、腫瘍の存在部位や周囲組織との関係を評価します。
また縦隔腫瘍といっても、それぞれのがん組織が異なっております。組織に応じて治療法を選択するため、腫瘍の一部を採取(生検)し病理診断を行う確定診断が必要になります。良性から悪性までいろいろ腫瘍が発生しますが、部位別で頻度が高いものは前縦隔には胸腺腫、胸腺がん、胚細胞腫瘍、中縦隔には悪性リンパ腫、気管支嚢胞、後縦隔には神経原性腫瘍、上縦隔には甲状腺腫、などです。
治療法は良性のものには原則として手術、悪性の場合は外科手術、化学療法、放射線治療を病理組織型や進行度(病期)に応じて組み合わせ、最も効果があると期待される治療法を呼吸器内科医、呼吸器外科医、放射線治療医が検討したうえで、主治医がご説明いたします。